Harmony Concert〈山形県白鷹町〉
室内楽コンサート同行記

主催者:ハーモニーコンサート実行委員会
協賛:メルファム東北
後援:白鷹町、鮎貝郵便局、山形日本フィルの会、ハーモニープラザ
出演者:Vl.加藤祐一、九鬼明子、Va.小俣由佳、Vc.伊堂寺聡、
Fl.阿部太彦さん(山形市在住フルート奏者)
山形県は朝日連峰の麓に、自然豊かで食べ物が美味しく、 心温かい人たちが暮らして
いる素敵な町があります。山形県西置賜郡白鷹町。 梅雨真っ只中の去る6月30日(土)町内の小山の高台にある 「鮎貝地区公民館ハーモニーホール」において、 日本フィル弦楽四重奏+フルートコンサートが開催されました。 コンサート翌日から主催者のもとには早速お客様方の反響が寄せられているとの事。 ここに僅かばかりのスペースを割きメンバーに同行した筆者がコンサート当日の模様を 報告させていただきます。 「白鷹町の自慢のひとつは信号機が数えられるだけしかないこと。」 これは会場へ向かう車の中で、我々を出迎えて下さった “ハーモニーコンサート実行委員会”事務局長の御代田修さん(山形日本フィルの会会員) が半ば冗談混じりにおっしゃった言葉です。 見渡す限り一面美しい田園風景と山裾が広がり、確かに『静かに耳を澄ましていい音楽を聞きたい・・』 という希望から出発したというこの実行委員会の理念が生まれた理由を知ったような気がしました。 耳を澄ませば虫の音が聞こえ、サヤサヤと梢をわたる風の音が聞こえ・・。 「空気の振動によって音が鳴る。」もう何年も前、学生時代に習ったことが頭の隅をかすめたのでした。



会場

リハーサル
会場に到着すると、これまでコンサートの準備に携わってこられた実行委員会の皆様全員が玄関で迎えてくださり、このコンサートに私たちを呼んでくださった気持ちがひしひしと伝わってきました。感謝。しかし次に私たちを待っていたのは、空調設備の不調による会場の蒸し暑さでした。実行委員会と駆け付けた業者の方々の復旧作業が続けられる中、この極度の高温多湿の中でリハーサルが行われました。どこまで温かいことやら!

司会もする九鬼

フルートカルテット
さて、夕方6時半からのコンサートには約200名(満員)の方々が足を運んで下さいました。復旧作業の甲斐もあり開場時間までには空調も順調に作動し、予定どおりハーモニーコンサートは開演しました。プログラム1曲目のモーツァルトのディヴェルティメントK.136が鳴り出したとき、“全員総出の手作りコンサート”という言葉が浮かびました。そういえば、「ホールとは名ばかりで・・・」と、ステージ上には事前に手作りの立派な反響板まで準備して下さいました。なんとすばらしい!それは決して一流のコンサートホール並みの響きに及ばない事は事実です。それよりもこの素敵な町にあって、地域に愛されて喜びを共有するコミュニティ基地(町民の調和“=ハーモニー”の場所)であることが大事でしょうし、現にその役割を充分果たしておられるのですから、その名の示す通り、すばらしいホールであると思います。休憩時間にはロビーでお客様全員にドリンクがサービスされ、実行委員の皆さんはウェイター・ウェイトレスとして奔走されておりました。コンサートの最後にアンコールで演奏した“七夕さま”では、会場全員の大合唱が起こり、そのホールの空気の振動は、私たちの心に深く刻まれました。また、笑顔でホールから帰って行かれるお客様方の表情は本当に素敵でした。

休憩時間の様子

花束贈呈
実行委員会の皆さんは開演前には手作りのカレーやおにぎり、旬のもぎたてさくらんぼ(さくらんぼ農園で働いている実行委員の方の差し入れ)でもてなしてくださり、終演後の交流会では山形名物「芋煮」を季節はずれながら巨大鍋に準備してくださったり、白鷹の美味しい米と水で作った日本酒(町内の酒蔵で働く実行委員の方の差し入れ)が振舞われたり・・・。また、このコンサートで私たちは、山形市在住で幅広く活動されているフルート奏者阿部太彦さんと共演させていただきましたが、阿部さんのもう一つのライフワーク(山形花泉凧4代目継承者)である“凧”が交流会で披露され、その伝承美には全員が唸りました。そして早くも次回のコンサートの話まで持ち上がり、このコンサートが成功であったことを実感したのでした。かくして温かい人たちに包まれた白鷹町での感動の一日が終わりました。


お一人お一人がそれぞれの得意分野で力を発揮し、支えあっていく“町内会のような実行委員会”。この方たちがいらっしゃる限りハーモニーコンサートは続き、白鷹は益々魅力的な町に熟して行くでしょう。近い将来、また是非素敵な町「白鷹」の“町内会”にお伺いしたいと思います。末筆になりましたが、今回のコンサートづくりにお力添えをいただきました全ての方々に心よりお礼申し上げます。ありがとうございました。本当にありがとうございました。 事務局 宇井秀一
後日談:舞台裏の事件 ハーモニーコンサート開演10分前に、チェロのI堂寺が衣装の蝶ネクタイを忘れてきたと言い出しました。早速、私Uは実行委員の方に蝶ネクタイを持っている方がいないか当たってみたものの、やはり予想に違わず普段からそのようなものを持ち歩いている洒落た紳士はいらっしゃいませんでした。そこで私はホール事務室から黒い画用紙とハサミとガムテープを借り、これで蝶ネクタイを作ってしまおうと意気込んで控室へ戻りました。控室には日本フィルのメンバー4人が集っていましたが、残念なことに私のそんな知的なアイディアは彼らに敢え無く却下され、同時に彼らの視線は私のネクタイに集中したのです。彼らが今まさにこの私のネクタイを蝶結びにしてしまおうと考えていることはすぐに分かりました。試行錯誤しながらもO俣の手により蝶をつくる作業が進められて行きました。「長く余ったところはハサミで切ってしまえば?」というK(Vl女性)の発言には流石に驚き止めに入りました。開演5分前、I堂寺の首には確かに蝶ネクタイらしきものが巻かれてはいましたが、私には彼(先程まで平穏に私の首に巻かれていたネクタイ)が慣れない結び方をされて悲鳴を上げているとしか思えませんでした。かくして何事も無かったかのごとく演奏会は始まりました。翌朝、別のネクタイを締めていた私の方を見て、「そのネクタイもなんだか素敵だねえ!」とI堂寺に言われた瞬間、私は胸のネクタイを今度は離すまいとぎゅっと固く握り締めたのでした。
完